究極のお煎餅を訪ねて 2
お煎餅の命は「素材」。
工場見学は建物を飛び出し、思わぬ場所へとつづいていた。
お煎餅の命とも言えるお米からできた生地は次の工程へ。
生地はのばされ、お煎餅の種類に応じて様々な厚さ・大きさに型抜きされる。
日本中、様々な業種や規模の工場にお邪魔しているが、共通しているのは
「必ず人が介在している」ということ。
たとえ機械化・自動化されていても、100%任せきりにすることはなく、
小さなずれや日々の気候との兼ね合いを人の手が調整していく。
こちらの型抜きの工程では機械が抜いた型の残りの生地を集め、
無駄のないようにしっかり再利用していた。
次々と型抜きした後は焼きの工程に入る。
生地に火力を加えると、ぽんと膨らむ。
完全な手焼きではなく一部機械化されているとはいえ
日によって変わる湿度や温度を読みながら焼き上げる技はまさに職人芸だ。
最後に天然素材の調味料で味付けをしていく。
焼き立てもおいしいけれど、その後冷やして味が落ち着いた後はもっとおいしい。
かたすぎず、噛めば噛むほど味が染み出てきて口の中で変化し、お米の味も感じる。
こうして出来上がったお煎餅は、敷地内にある「さがえ屋本店」をはじめ、
ネットショップや卸を通して全国に届けられる。
ちなみにさがえ屋さんはもともとは工場だったので直販はしていなかったのが、
近所の方々に手売りで販売していたところ人気を呼び、
ついに工場の敷地内にお店をつくってしまったという経緯があるそう。
「毎日多くのお得意様にお越し頂き、直接ご意見をいただいています。
季節ごとの新商品や、定番商品についても、率直にご意見をいただいたことを
すぐに裏の工場に持ち帰って反映させることができます」
本店でお客様と接する機会の多い阿部友行さんは嬉しそうにお話ししてくださった。
編集雑談メモ:
山形にはとにかく阿部さんが多い!
孝一郎さんと友行さんは血縁関係はなく、社内にまだ阿部さんが存在するそうです。
鈴木さんも多いですが、米どころならではのルーツがありそうですね。
さてひとしきり工場を見学した後、次に案内して頂いたのは――「田んぼ」!
出迎えて下さったのは農家の鈴木さん。
ここでは山形の特別栽培の新種米「つや姫」の実る様子を見せて頂いた。
特別栽培はこれまでの地域慣行レベルに比べて節減対象農薬の使用回数が50%以下、
化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培されていることが条件。
最初から完全なオーガニック農法が難しい場合もそれに向けての貴重な一歩となる。
さがえ屋さんでは、2010年に販売が開始されたばかりのつや姫を使い鉄板で手焼きした「極み焼き」というお煎餅をつくっている。(モニター募集中。詳しくはこのページの最後に)
このあたりの農家さんと一緒にお米の栽培から手掛ける徹底ぶりだ。
地元から仕入れるだけでなく栽培している様子も日々見ることができる。
そして、さらに見せて頂いたのは寒河江市内を流れる寒河江川。
澄んだ川は市内では生活用水として使われている。
川を上流にたどっていくと、たどりつくのは日本百名山のひとつに数えられる月山(がっさん)だ。
標高1984メートル、山麓にはブナをはじめとする美しい広葉樹林が広がり、
たくさんの湧水を見ることができる。
この源流が集まって先ほどの川に流れ込むわけなので、
小さな水の流れ出すこの場所は寒河江市の命の源とも言える。
さがえ屋さんにとって究極の品質は何ですか?
いっしょに月山を登りながら、阿部さんはこう答えてくださった。
「究極は、どこまでも素材。最高品質の米から作ることですね。
寒河江には月山がありゆたかな美しい水が流れています。
この水と、農家さんと一緒にお米から育てておいしいお煎餅をつくりたいんです」
この取り組みは実際に国の農商工連携支援事業に認定され、現在新商品も開発中だ。
開発会議では様々なシーンでのお煎餅の役割についても話し合われている。
私たちが訪れたときは仙台から歯科医の柏崎潤先生も参加し、
「歯ごたえがよいお煎餅を噛むことで脳に刺激が送られ、おやつとして健康にも良い」と話されていた。
では季節ごとに次々出る新商品が愛され続けてる秘訣は?
この質問は心の中にとどめたが、工場直売で日々接するお客様の声を第一に聞く企業姿勢なのかもしれない。
寒河江で見つけたサステナビリティは、工場の水処理や省エネという方向性の環境配慮ではなく、
原料やその源である水までも目に見える、地域を一つにする仕組み。
お煎餅のこだわりからはじまって、今後お米や調味料が遡ってどう変化していくか楽しみだ。
素材、季節感のこだわりだけでなく、さがえ屋さんが何より大切にしているのは、
きっとお客様・工程に関わる方々・周囲の自然との「絆」なのだと感じた。
Thank you!
工場内、つや姫の田んぼ、そして月山の源流までご案内下さったのは阿部孝一郎氏と阿部友行氏。
孝一郎氏は山形大学大学院にて修士号を取得しながら新製法の研究開発に成功、産学連携の一つの理想として注目されています。
写真は左から阿部孝一郎さん、農家の鈴木さん、阿部友行さん、編集の大塚。貴重な体験をありがとうございました。
お煎餅工房「さがえ屋」ウェブサイトはこちら≫http://www.sagaeya.co.jp/
文・大塚玲奈/写真・黒澤崇















































