日本のワタ「和綿」を育む
~綿花の在来種を守り続けて~
ふわふわの白いコットンボールから取り出せる繊維はごくわずか。
この大切な自然の恵みは、化学繊維が増えた今も
布団の中綿や衣類の素材に重宝されています。しかし遠い国の植物だった綿が日本に定着して
独自の歴史を刻んできたことは、あまり知られていません。
国産の綿「和綿」はどこへ?
現在日本で使われている輸入綿の多くは、農薬や遺伝子組み換えなど、さまざまな環境問題を抱えています。さらに、労働条件や南北格差の問題も背負っています。
環境や生産者に配慮した「オーガニックコットン」でも、その原料は遠いアフリカやインド、アメリカ、トルコ、ペルーなどから輸入しています。
綿花はアオイ科ワタ属の植物。原種の分布域は、赤道近くの熱帯・亜熱帯地域です。日本には平安時代に渡来し、室町時代に本格的な栽培がスタートしました。
江戸時代の衣類は紙や麻、木綿や絹・真綿※など、国産の天然繊維で作られていました。海外に輸出するほど綿花を生産していた時代もありました。
当時の日本には“白い綿花が揺れる綿畑の風景”が広がっていたことでしょう。しかし今は綿花畑をほとんど見ません。盛んに栽培され日本の風土になじんだ「和綿(わめん)」は、どこに行ってしまったのでしょうか。
※木綿(もめん)は、ワタの種子を包む白い部分から採れる植物性繊、真綿(まわた)は、カイコガの作る繭(まゆ)から採れる動物性繊維です。
小さな「和綿」畑が各地に健在!
繊維が長くて糸に加工しやすい上に安い輸入の綿花に押され、繊維が短くて布団の中綿くらいしか用途がなかった和綿の生産量は、戦後になって急激に落ち込んでいきました。
しかし、ほそぼそとですが大切に日本古来の綿を守り育ててきた人たちがいます。
その一つが、茨城県つくば市にある和綿畑「おらコットン」です。
代表の村井和美さんは、縁あって吉村武夫さん(花嫁わた株式会社の三代目社長)と出会いました。馬が合って話し合ううちに、村井さんは和綿(霞ヶ浦木綿など)の種を、吉村さんから手渡されました。この種こそ村井さんの人生を変えた、まさに「運命の種」でした。
貴重な和綿の種を放っておくことができなかった村井さんは、「家庭菜園の経験すら全くない普通の主婦」を脱して、にわかにワタ栽培と向き合うことになりました。1999年のことです。
畑探しから始まった毎日は試行錯誤の連続。しかし自然との対話が上手な村井さんは、あきらめません。「分からないことは畑に聞く」という師匠・吉村さんの教えを守り、地道な作業を積み重ねました。
吉村さん亡き後も種を守り続けた村井さんは、今では2反(約1983.5平方メートル)の畑で、毎年120~200kgのオーガニック和綿を収穫しています(ただし綿花の3分の2は、種の重さです!)。
おらコットンの綿花畑は、農薬も化学肥料も使いません。土壌を改良し続けて、土の力を頼りに、手間を惜しまず育てています。
綿を採った後に残る実は、そのままで牛の餌になり、絞れば食用の「綿実油(めんじつゆ)」も採れます。「本当に捨てるところが無いんです。紡いだ糸も、切れても何度でも紡ぎ直せます」と村井さん。リサイクルという点でも綿はエコな素材といえそうです。
「和綿倶楽部」のこと
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布団の打ち直し会社に勤めていた杉本会美さんは、綿がいかに大量に消費されているかを知りました。栽培者や消費者から綿がいかに大切にされているかも痛感しました。そのころに出会ったのが、国内でも綿花栽培ができる「和綿」と、その栽培者である村井さんでした。
実際に和綿を栽培して「綿からもらうパワー」に魅了された杉本さんは、衰退している国内の綿花栽培の復活を願うようになりました。
そして2009年、さまざまな縁やたくさんの夢に背中を押されて「和綿倶楽部」を立ち上げました。「みんなで土に触れて、日本で生まれて日本で育った和綿ができるまでの喜びをシェアしたい」そんな想いから、社会人や学生など約30 人のメンバーが集まりました。
テーマは、綿花畑での栽培体験を通して和綿の魅力や綿のある生活について考えること。主な活動として、有志が月に一度「おらコットン」の和綿づくりを手伝ってきました。
収穫後のお楽しみは、綿花の白いところ、いわゆる「コットンボール」から繊維を紡ぎ出して糸にする「わたくり」。冬には、一般参加も歓迎の「わたくり体験」を都内で開催しています(次回は2012年12月初旬予定)。
和綿倶楽部は今後、全国各地の和綿生産現場ともつながりを強め、活動範囲を広げていく予定です。
在来種の命は、種を育てて結実させる営みを続けて行かなければ絶えてしまいます。日本の気候に順応した和綿は、ベランダや狭い庭でも育てられます。
服飾や素材に関心がある人から、ただもうフワフワなものが大好き!という人まで、和綿倶楽部の活動に気軽に参加してみてはいかがですか?
文・瀬戸内千代 写真・和綿倶楽部、瀬戸内千代
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和綿倶楽部 × 風で織るタオル
2011年秋、和綿倶楽部と「風で織るタオル」で知られる池内タオルの協力で、「おらコットン」の2年分の収穫が3種類の和綿商品になりました。
日本の伝統色「茄子紺(なすこん)」に和綿倶楽部のシンボルマーク「わめんどり」を白く染め抜いたタオルハンカチとガーゼマフラーと和てぬぐいです。
糸作りに適さない和綿を、和綿ならではのしっかりとした手触りを残しつつ織り物にするために、ペルー産のオーガニックコットンを50%混紡しました。こうして今回の商品のために開発されたのが「オエドニホンバシ」というオリジナルの糸です。貴重な糸なので、商品の数にも限りがあります。
和てぬぐいは明治時代から続く浅草の老舗「染の安坊」が「注染(ちゅうせん)」という昔ながらの技法で染めました。両端は昔のてぬぐいを再現して、敢えて「切りっぱなし」。ほつれたら切って使います。手や顔を拭く布は清潔が一番!という江戸っ子には、汚れがたまる縫い目や折り返しのない、この仕上げが好まれたという話もあります。
(※先日放送されましたテレビ番組にてメーカーの池内タオル(株)がご紹介され、現在ご注文が殺到しております。ご商品によってはお届けが1月末以降になってしまうものもございます。あらかじめご了承ください。和綿製品は数量限定生産のため、現在は在庫がありますが、無くなり次第終了となります。お早目に!)
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